和泉清孝ベルギー便り

 
 
 
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5月18日 バリトン歌手とのジョイント・コンサート

 今年で90歳を迎えた元ベルギー大使の誕生日記念演奏会に招かれました。この大使にはバリトン歌手のご子息がいて、僕は光栄にも今回この方と共演させて頂く事ができました。世界各国においてベルギー大使としてご活躍なさった、今はご高齢のヴァンデルリンデン氏ですが、実は若い頃にはピアノを弾いていて、しかもデュルレ氏の弟子だったそうです。そのような理由から、僕は今回もデュルレやショパンの名曲を披露しました。

 後半はご子息のバリトン歌手とベルリオーズやデュパルク等のフランス歌曲を演奏しました。このご子息はブリュッセルを拠点に活躍なさっている歌手です。昔はオペラにも多数出演したそうで、過去のおもしろい話をたくさん聞かせて頂きました。その中で最も印象的な話が、スペインでの「カルメン」上演の際のハプニングです。以下がその要約です。

 ちょうど舞台に上がる直前の出来事で、オペラはすでに始まっていて自分の出番が間近に迫っていた。ところが、緊張のためか喉が渇いてきた。舞台裏は暗くて良くは見えなかったが、手に触れたボトルを水だと思い込み、一息に飲み干した。。。ところが、それは水ではなく黄色のペンキのボトルだった。すさまじい味がしたので、とっさに吹き出したが衣装がまっ黄色に。口の中もまずいペンキだらけで呼吸をするのもつらかった。あわてて近くにいた人が水(本物の)を持ってきてくれ、口をゆすぐ事は出来たものの衣装を取り替えている時間は無かった。そのまま舞台へ出て歌ったが、本来のタイミングよりもはるかに遅れて登場し(アリアの出だしを歌い損ね)、しかも衣装はまっ黄色。観客には訝しげな視線を注がれた。後に舞台のスクリーンに事故の説明(どうしてバリトン歌手が遅れて登場したか。またどうして彼の衣装が黄色かったのか)が大きく載せられた。それで観客も納得したようだ。

「今となっては笑える話だが、その時は笑えなかった。。。。」とは彼の結びの言葉。これを聞いて僕は大笑いしてしまいました。
 ホールは家の近くにある「Zaal 7」というホールで、歌劇場を小型にしたような洒落た内装になっています。演奏会は招待客限定になっていて、終了後にはレセプションがありました。聴衆のほとんどがフランス語圏の人達だったので、会話には少し不自由しましたが(幸いにもオランダ語を話せる人もいた)、お褒め頂いている事だけは理解出来ました。

5月18日 バリトン歌手とのジョイント・コンサート
5月18日 バリトン歌手とのジョイント・コンサート


2008年05月29日 (木)  和泉清孝